ICを使った270-30

1965年(昭和40年)ICを使用した計算機の可能性を調査するためにアメリカに出張しました。 3人のメンバが約3ケ月で、半導体からメモリ、コネクタなどの部品類を調査しました。 当時の論理回路は、テキサス の TTL モトロラのMECL フェアチャイルドのCTLが候補でした。 調査の結論としては、ICは今後、商用計算機に使われるようになるだろうということがはっきりしました。 また回路はTTLがよいということもわかりました。 バッケージは TEXASが 下に足の出るタイプ、モトロラが 横にでるタイプでした。 そこで、早速TTLのICを使ったコンピュータを開発することになりました。 当時は、231の系統の230シリーズがありましたが、科学計算用や制御用の計算機が必要でした。
IBMには IBM1130/1800 というシリーズがありました。 これを念頭において270シリーズというシリーズが開発しました。
270-10と270-20は 従来のディスクリートを使ったもので、先に開発されていましたが、 この上位機種として、270-30という機種をIC を使って開発しました。
この計算機はICを使った計算機を設計するための手法を確立するためにも行いました。 計算機を使って、計算機を設計する設計自動化(DESIGN AUTOMATION)のシステムを開発しながら進めました。
試作機は1966年秋に完成して、晴海で開催された国産電算機ショーに出展しました。
のちに商用機を完成して、販売しました。
研究所や大学の科学計算用として、好評を博した計算機となりました。
成果は富士通の技術雑誌FUJITSU 1967 vol.16 no.4 (1967年7月)に発表しました。
ICを使った計算機を設計する技術はそのまま、230-60という富士通の最上位機種の開発に適用されました。

  • 270-30システム全景 論文1 2 3 4 5 6


  • FACOM270-30プリント板エンチッング関係障害の状況をまとめた資料で、 昭和41年8月22日の押印があります。 出来上がったプリント板は積層され、スルーホールをつけて、完成したものをテストしました。
    43枚のプリント板がありますが、 端子のところで、アースに落ちているもの、過剰接続、不足など パターンの不良が多数見つかりました。

  • FACOM270-30で発生した諸問題 2 3 4という報告書です。
    これは、270設計の班長だった久保田さんの手になるもので、41年8月22日の押印があります。
    F270-30の試験を始めて、一月たった時点での問題点をまとめたものです。
    1) 構造上の問題点
       バックパネルの配線の問題  カードのコネクタの問題。
    2) その他 部品不良
    3) カードについて(プリント板カード)
     1. 設計を手作業でやったので、誤りが非常に多い。
        パターン設計の後、X層とY層に分割するところで、大量のミスが出ている。
     2. 多層プリント板の製造にもミスが非常に多かった。
        ICの取り付け間違いやIC破損も多かった。
     3. 修理
        不良のカードは修理をするのだが、ICの交換やストラップ線への考慮がなかったので困った。
    
    等々  実際にやってみると当然のようにぶっつかる問題点が書いてあります。
    
    新しい実装方法を採用したので、プリント板のエッチングをする人もプリント板を組み立てる工場でも
    経験がなく大変でした。
    不良個所は修理して使うわざるをえないのだが、パターンを切断したり、接続したりする技術もなく
    最初は手さぐり状態でした。
    
    使用した Texas InstrumentsのSN74シリーズのパッケージは 今のようなdual in line ではなく、
    下に足のでているタイプで、しかもピンの材質が、ハンダがうまくつかない丸いピンだったので
    ストラップの追加には実に困りました。

    このようにして、270-30の試作をしながら、ICの計算機の設計・製造ノウハウを蓄積してゆきました。

  • 270-30の試験経過状況 2 という報告書です。
    昭和42年3月14日付け PTテストシステムの人たちに説明したものを要約したものです。
    それぞれの項目に、当時苦労をした思い出があります。