Design Automation

計算機の設計に計算機を使うということは、現在では当たり前ですが、1965年当時の富士通ではそれが夢でした。
F270-30を実験材料にして、IC計算機の設計自動化のシステムが開発され、F230-60という当時の超大型計算機の開発に使用されました。 これは、その報告で富士通の技術雑誌「FUJITSU」 vol.19 no.1 (1968年1月)に発表されました。
  • IC計算機の設計自動化という論文です。
    富士通は歴史的には、ドイツのジーメンスの設計・製造システムを引き継いでいます。 コンピュータの設計においても、素子や機械の内容は違いますが、設計・製造システムは同じものを踏襲していたといえます。
    しかし、計算機を使って設計するという新しいシステムを構築するためには、当時進んでいたアメリカ(特にIBM)の 手法を研究してこれを取り入れました。


  • IBM 7000シリーズのDA 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
    の論文です。 これは 1958年(昭和33年) EJCC に発表された The Recording,Checking, and Printing of Logic Diagram と いう論文です。
    設計者が回路図を作ってそれを計算機に入れて、このファイルを中心に設計・製造をする一連のシステムです。
    IBM は 当時稼働していた、IBM-704 , 705 を使用して 7000シリーズの設計システムを作ったのでした。 末尾の議論のところで、
    このシステムを一般に公開するかという質問に対して 使いたいという人には喜んで公開する。 我々は隠すつもりはなく、計算機の活用を広めたいと答えているのが印象的です。
    古き佳き時代という感じがします。

  • IBM 360のDA 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
    の論文です。 これは 1964年4月 IBM Journal of research and development に発表された IBM System/360の一連の論文のなかにあるものです。 以前の論文と同じ著者名で、IC計算機の設計・製造のために、IBM-7090を使うようになっています。
    昭和39年7月6日の神田の押印があります。
    DAシステムの調査など
    私は実際の機運が盛り上がる前に、いろいろと関心をもっていて調査をしました。

  • 論理条件のチェック 2 3 4 5 の研究の報告書です。 昭和38年(1963年)6月1日の日付のある私の報告書です。
    F-241 を使って、当時230-50用に開発されていたテスト計算機「π」のデータを使ってテストをしています。 同じ布線の接続しているプリント板の条件をしらべ、分岐数のチエックなどをしています。これは回路図印刷にくらべても簡単であるということがわかりました。

  • 回路図印刷 2 3 の研究の報告書です。 昭和38年(1963年)6月3日の日付のある私の報告書です。 このころは回路課に所属して、コアメモリの設計をやっていましたが、計算機を使って計算機を設計することに関心をもっていました。
    当時は実験室にFACOM-241が1台あり、システム試験や調査に使われていました。
    この機械は周辺装置がついていなかったので、その当時実験室にあった紙テープリーダと紙テープパンチャとJP-2というテレプリンタを F-241に接続して使いました。
    まず、非常に簡単なアセンプラを作り、これでプログラムを開発しました。 このアセンプラは、アドレスの割り当てだけを自動的にやってくれるものです。
    これは印刷した回路図のサンプルです。
    これも別の回路図のサンプルです。

    これはプログラムの説明 2 3です。1000語しかないメモリでやりました。
    これらの調査によって、計算機で回路図を書くことの大変さがよく分かりました。


    回路図面規約
    回路図の図面規約は、DAのためには非常に大切なものです。
  • 223G型回路図面規約と呼ばれる図面規約です。 これは昭和40年4月26日の鵜飼さんのサインのある図面です。当時は、F230-50の設計が進んでおり、 4MHzの基本回路を使って論理設計をしました。
    それまでの、富士通の計算機の回路図は、大きな紙(A2の大きさのもの)の上に、自由に論理回路を書きました。 論理回路のシンボルの大きさも自由ですし、設計変更にしたがって、どんどんその上に変更を加えてゆきます。 回路の追加があると、小さなシンボルでどんどん追加してゆくといった具合でした。
    この223G型というのは、図面の用紙の名前223Gからとったものです。A2のトレーシングペーパ用紙で青で枠がつくってありました。 この枠の位置にしか、論理回路がおけないように約束を決めました。 230-50は手書きの図面で設計されましたが、この用紙を使いました。今後のDAシステムを想定したものでした。
  • 223G-IC回路図面規約です。 41年2月18日 3版の神田のサインがあります。(初版のサインは 40年9月17日です)
    これは、223Gの回路図面規約を踏襲して、IC計算機のために拡張したものです。 この回路図面規約は、そのまま計算機に入力して、計算機でメンテナンスして、必要なら計算機から回路図を印刷することを 想定した回路図面規約です。論理シンボルは機械印刷に向いているASA のスタンダートを使いました。
    この図面規約で、F270-30を設計してゆきました。
  • 223G-IC回路図面規約の社内図面として正式登録したものです。 サインは42年2月10日になっています。この図面規約をもとにして、DAのシステムを設計し、ほかの機種も設計するようになって行きました。
    これは、 計算機で印刷した回路図面のサンプルです。
  • F270-30 Design Automationの諸問題という資料です。
    昭和40年9月24日の日付のある資料で、当時の取り組みが分かります。
  • F270-30 Logic Simulationの効果という報告書です。
    41年3月と41年9月のもので、当時進んでいたDAシステムの開発や、F230-60の設計へのフィードバックのためのものでした。
  • F270-30 電子計算機組織についてという41年度電気通信学会全国大会の論文です。
    270-30の紹介とともに、集積回路の採用と論理チエックという項目があります。
    「集積回路の採用により、一枚のプリント板カードに相当大きな機能をもった回路が実装できる。 しかし、この集積回路の相互接続はプリント板のパターンで行われるので、製作してからの変更が非常に困難 であり、そのため論理設計の誤りを極力少なくする必要がある。
    従って、論理シミュミレータを開発し(LOS-1を改良したもの)CPU関係については、各機能単位のシミュレーション から始めて、命令一つづつ、終わりにはプログラムのシミュレーションまで行って誤りの発見につとめた。」
    と書いてあります。