漢字のことや 日本語入力をめぐって


一番古いワープロの提案の資料

1976年(昭和51年)11月の日付のある、「わが国におけるタイプライターの問題と提案」と題する 財団法人 全日本能率連盟 人間能力開発センターの資料です。

  • 表紙 裏表紙 目次1 目次2 まえがき1 まえがき2
    01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62
    目次にもある通り、国字問題と先覚者たちでカナモジ会の話があり、和文タイプライタのこと、 コンピュータの漢字処理、欧米におけるタイプライタの機能を述べ、電子タイプライタの提案をしています。
    この電子タイプライタはいわゆるペンタッチ方式のものです。1兆円の新市場であるとあります。

    当時の最高の知恵を絞った結果をまとめたものとして、価値のある資料です。
    明治・大正・昭和3代の夢と願いという折り込み資料には心打たれます。

    漢字入力法の人間工学的検討

    1978年8月24日に情報処理学会19回全国大会にパネル討論会がありました。
    この時代では、漢字の入力は専門の分野でのみ使われていました。
    連想方式、漢字テレックス、写植機などが使われていました。
  • パネル討論会の記録

    日本文の入力方式

    1981年7月2〜3日に情報処理学会でのシンポジウムがありました。
    日本語の入力が一般の関心をよび、議論にも沢山の人が加わるようになりました。 入力方法についても、いろんな意見がありました。
    カナ漢字変換、連想方式、ペンタッチなどの方式がありどれが有力かまだ結論はでていませんでした。
  • シンボジウム記録 の全部をいれました。

    カナ2タッチ(連想方式)

    カナ2文字で漢字を入力する方法です。
  • ラインプット1 2 川上晃さんの発明です。川上さんは1942年ソクタイプを発明して、裁判所などでは速記機械として今も使われています。 また、アメリカのドボラーク博士との交流、ローマ字カイプライタ、ひらがなタイプライタの研究などを経て漢字かなまじり文を打つための研究をはじめました。 1970年にラインプットを発表して、オペレータを養成してきました。コンピュータ、電算写植などの入力に使われました。
  • KIS方式 九段コンピュータサービスのやっていたもの。文字のコードをきめた経緯などがある。 (日本工業新聞 1978年4月25日)コンピュータ用の漢字入力業務に使われた。
  • ワープロの入力方法として採用したもの
    ・日立とリコーは(1979年)はこの方式を採用していました。 しかし、ほどなくカナ漢字変換を併用するようになり、結局はカナ漢字変換になってゆきました。

    ・すこしあとでエプソンのワープロにはタッチ16という名前で、カナ2タッチが使われました。

    キーボード

  • 親指シフトキーボードの開発評価をめぐる話題。
  • JISキーボードをめぐる話題です。
    現在つかわれているパソコンなどのJISキーボードはもともとはカナモジカイのカナタイプからきています。
    また、JISを改良した、新JISキーボードも作られました。 1999年3月20日 新JISキーボード規格は廃止になりました。
  • M式キーボードの話題です。日本電気の森田さんの開発になるもの。
  • トロンキーボードです。
  • 「ナラコード」キーボードです。 これは、キーボードの配列を50音順にしたもので、配列が覚え易いという特徴があります。
    また、「しょう」などが一度に打てるようになっています。

    漢字の問題・ カナモジカイ

    明治大正時代から、日本には漢字があるから世界の大勢に遅れるということで、カナだけで日本語を表記すべきであるというカナモジ運動がありました。それを推進していたのが、
  • 財団法人カナモジカイでした。 カナモジカイなどの活動は戦後の国語審議会の議論にも大きな影響があり、当用漢字の制定はこの流れで決まったものです。

    外国の例
    ベトナムは、以前は漢字を使っていましたが、フランスの植民地になったときに、アルファベットで表記するようになり漢字はやめてしまいました。
    また、韓国、北朝鮮では、漢字をやめて、ハングルで表記するようになっています。
    このように、漢字をやめてしまった国の例も世界ではあるのです。
    また、中国では大胆な漢字の簡略化を行いました。中国でも漢字を簡単にして、そのうちにはなくしてゆこうという発想もあったようです。

    漢字の簡略化

    漢字は書くのが難しいからもっと簡単にしようという発想もありました。
  • 活動の例

    日本STB協会

    漢字の入力を簡単にするためには、使用する漢字の数を制限して、この少ない数の漢字をペンタッチ方式で入力しようという発想がありました。それを推進していたのが、 日本STB協会です。主張としては、実際に或る分野で使われている漢字を調べると非常に種類は少ないから、漢字を500文字に制限してそれで文書を作るようにしようという発想でした。
    実際に調べてみるとその通りなのですが、いろんな分野が増えてくると結局は漢字の数はどんどん増えてゆくというのが実態でした。 したがって、現実的ではなくこの発想も実際には使われませんでした。
    当用漢字でも1850文字あるのですから、これを500に制限するというのはかなり無理があることでした。

    これはその資料です。 その1 その2 その3 その4
    この資料は、日本事務機械工業会の「事務機械のビジョン」(昭和51年度報告) 昭和52年5月 の 中にあるものです。
    STB協会のメンバの氏名です。ワープロの出現する前にはこのような議論もあったのでした。


    福田恆存さんの「私の国語教室」

    戦後のカナモジやローマ字論、漢字制限論の大きな嵐のなかで、漢字擁護の論陣をはったのが、シェイクスピア学者の 福田恆存さんです。現在では、中公文庫のなかに「私の国語教室」という本に収められています。
    福田さんはこの本の中で、歴史的かなづかいの大切さと漢字の大切さを論じています。
    特に、世の中が圧倒的な漢字制限論、カナモジ化の流れの中にあった昭和30年代に書かれた漢字の大切さの議論は40年経った今でも みずみずさを失わない名著です。
    この本の中から少し紹介します。

    表音主義の論点
    当時、表意主義と表音主義が対立していました。表音主義はカナ文字論者やローマ字論者です。 表音主義者の主張する利点とはなにかということで、4つの利点が挙げられています。

    1.発音と文字がずれているのは不合理である。文字は読みを表すものであり、事実、世界の趨勢から言ってもそうなりつつある。
    2.漢字の習得には時間がかかり、しかも社会における表記法に混乱が生じた。
    3.そういうものを習得するよりは、算数理科社会などにもっと力をいれるべきである。
    4.事務の近代化のためには機械を用いなければならないが、漢字ではいつまでたっても近代化は計れない。

    これらの点については、明快な反論があります。
    反論
    表音主義の犯した過ちは二つあり、
    第一はタイプライターという、西洋の表音文字のために発明された、それももう直ぐ前世紀の遺物になってしまうような機械を、 まるで近代文明の象徴のように考え、それが永遠に存続してそれ以上のものは発明されぬと思いこんで、 それに合うように国語の表記法を変えようなどと愚かな考えを懐いたことである。 発明というのはすべて西洋が行い、日本はそれをまねするだけで、日本人が日本の現実に適応した発明をしてもよいのだということに思いおよばなかったのであろう。
    第二の過ちは、文字は専ら書くためのものと思いこんで、それが実は読むためのものである事を忘れている事である。
    (原文は旧仮名遣い、旧字で書かれています)

    と明快に論じています。
    ワープロの出現と機械による日本語情報処理の進展を昭和30年代に予言したものといえましょう。


    漢字を生かして、相互理解にという朝日新聞の社説

    1999年7月4日の朝日新聞の社説です。 「漢字文化圏」の国々ではいま、漢字を見直す動きが起こっている。 という書き出しで、漢字をもっと生かそうという論文が載っています。
    従来ではみられなかった論点で、私は以前からこのような考えでした。

    一度漢字が姿を消した韓国で、漢字を見直す動きがある。
    中国の漢字の簡略化の流れ。
    日本の漢字の扱い。戦後は漢字を廃止せよと論じた新聞もあった。
    米国の教育使節団も漢字の廃止と表音文字の採用を勧告した。
    しかし、日本では簡略されながらも生き延びた。漢字と仮名まじり文はすっかり定着して、今後もこのまま当分続くだろう。
    情報化、国際化の時代を迎え、漢字は効用が見直されている。コンピュータやワープロで漢字が簡単に処理できるようになったからである。
    漢字を使って、相互の理解を助けるようにけないだろうか。というような論点です。

    漢字を生かそう