キーボードのJISカナ配列

キーボードのJISはどのようにして決まってのでしょうか
日本では、カナのキーボードとしては、カナタイプで使われていたカナキーボード配列と、印刷電信機でつかわれていたカナキーボード配列の二つがありました。 1964年にきまった JIS B 9509はビジネスユースのカナ・ローマ字タイプライタの配列を統一したもので、従来のカナタイプの実績が引き継がれました。
  • JIS B 9508 カナ・ローマ字タイプライタのケン盤配列の表紙
    JIS B 9508「まえがき」 で、 この規格の生まれた経緯がかいてあります。 これまでに、印刷電信機の規格があるので、共通のケン盤配列を求めて審議したが、 何がよいかは調査するのには長年月を要するので、一般事務用の現状を正視し、 国際情勢を考慮してこの規格を別個に制定したとある。
    JIS B 9508ケン盤配列 配列1と配列2があり、配列1は数字が真ん中にあるものです。
    カナ文字の配列は大正12年にカナモジカイの山下芳太郎が決めたカナタイプ のキーボードがベースになっています。 昭和16年のカナタイプ16年式 アルファベットとカナが両方打てる、コンビネーションタイプライタ に引き継がれそれが、JISのカナ配列のベースになっています。 カナタイプライタのカナ文字の配列は、 まず、濁音と半濁音のキーを右側に置いたので、濁音になる文字(カ行 サ行 タ行 ハ行)は左側に置いてあります。これは、両手を交互に打つと速度が上がるからです。 濁音になる文字は本来割合頻度が高い文字が多いために、左側に頻度の高い文字が偏る結果となっています。 また、ある程度のまとまりをもって配置してあり、覚えやすいように考慮してあります。
    親指シフトでは、濁音キーがないため、文字の頻度や遷移頻度で、両手に文字が配列できています。
    JIS B 9508解説 で、これは、一般事務および会計機械用で、電子計算機系タイプライタのケン盤配列はまだきまっていないとあります。
  • JIS C 6233解説 1972年になって、情報処理系けん盤配列ができました。これはその解説で、規格の成立した経緯が書いてあります。 カナ文字の配列については、従来から使用されているけん盤配列の実績を尊重したとあり、カナタイプの配列がとりいれられています。 このようにして、現在のJISかなの配列はきまりました。

    新JISけん盤配列

    1986年になって、「新JIS配列」とよばれる「仮名漢字変換形日本文入力装置用けん盤配列」JIS C 6236 が制定されました。 規格の全部を載せておきます。
  • JIS C 6236の表紙 です。
    適用範囲 です。主として、仮名漢字変換形日本文入力装置で使用する両手操作形けん盤配列について規定するとあります。
    配列 です。
    文字 です。
    シフト機能キー です。
    つづき です。
    解説 です。
    解説 審議の経緯・概要 資料の収集 です。
    解説 けん盤配列の設計 です。
    解説 けん盤配列の評価 です。
    解説表 両手の負担 です。
    解説表 指別使用率 手の遷移 です。
    解説表 段の遷移 入力実験による評価 です。
    解説 適用に関する付帯規則 です。
    標準化調査委員会メンバ です。
    A 専門委員会メンバ です。
    裏表紙 です。

    この規格をワープロ用の新しいキーボード規格として普及させようと努力がされました。

  • 情報技術標準化へ取り組む という、工業技術院の1987年秋のデータショウでの展示の時のパンフレットの表紙です。
    展示の説明 で、新JISキーボードコーナと文書ファイル交換コーナーがありました。
    文書交換用ファイル実装状況 です。
    違ったメーカの文書ファイルを交換するための交換用ファイルの仕様をきめて、それを各社がサポートすれば、 文書ファイルが交換できるという発想のもとに、文書ファイルのJISが決められました。 しかし、この時に展示をしたのみで実際には全然使われませんでした。 いろんな機能まで含めて決めたために、現実的ではなく、この文書規格は実用的ではなかったのでした。
    新JISキーボード実装状況(昭和62年) ということで、10社 46機種のワープロ・パソコンに実装されています。 富士通ではオアシス11機種に実装されています。
    (規格協会のサイト)新JISキーボードが廃止されました。
    新JISキーボードが廃止されました。
    廃止年月日 1999-3-20 廃止理由 使用実態がないため廃止する となっています。
    (JIS C 6223 は 1987-3-1 にJIS X 6004になっています)
    このように各社がワープロに実装したのにもかかわらず、この新JISキーボードは全然使われませんでした。 いまでは、その存在すら忘れられてしまいました。

    普及しなかった理由として考えられるものは
    1.このキーボードが優れていなかったのではないか?
    2.それまでにも実績が全然なかった。
    などがあげられると思います。

    キーボード単体としては、いろいろな実験がされましたが、装置としてまとまったもののテストはされませんでした。 そのため、実際にどんなものかはよくわかっていません。
    また、このキーボードの優位性を信じて普及させようという人や組織もありませんでした。

    このキーボードはその審議の経緯から、A専門委員会の委員長の渡辺さんのリードで進められました。 渡辺さんは工業技術院電子技術総合研究所の研究室長で、キーボードの研究をしており、その成果がそのまま新JISになりました。
    このキーボードの発想としては
    従来のカナキーボードは、4段になっているために、アルファベットのキーボードのようにタッチタイプがやりにくい。 その解決方法として、小指で逐次シフトをして3段にかなを配列してあります。 このため、当然のことながらかなの半分のものがシフト側になってしまっています。
    そのため、まず小指によるシフトが猛烈に増えるということでタッチ数が増えます。また、小指はそんなに器用な指ではありませんので、小指に負担がかかるということもあります。 そういう意味では、JISキーボードのカナ配列に比べて、3段にしたのはよいのですが、タッチ数がふえてそれが入力の大変さにつながります。
    しかし、JISの解説にはこの方式がよいということが、研究の結果立証されたとデータをもとに記述してあります。

    解説の概略は
    3段形のものと4段形のものとを作り実際にテストをした結果として 3段形のものが、入力速度が100文字に達する学習時間は4段形にくらべて、半分である。入力速度を同じ学習時間で比較すると、3段形のほうが毎分あたり20文字速い。 3段形のシフト側の入力では、シフト側右手系の2文字を連続して打つ場合が 4%増し、左手→右手で打つ場合が25%増しであった。 被験者の全員が、シフト側の文字の方が入力しやすいという意見だった。・・とあります。