M式キーボード

日本電気の森田正典さんが開発したキーボードです。 森田さんはマイクロ波通信技術の専門家でしたが、60歳をすぎてから日本語入力の研究をされこのキーボードを開発されました。 1983年3月学会発表・新聞発表
  • M式の世界 というホームページができました。

    こちらが、 これが日本語に最適なキーポードだ という本(1992年3月25日日本経済新聞社発行 )です。
    JISキーボードでも、親指シフトでもキーはカナ文字に対応しているのですが、この方式は日本語の音韻を研究して、複合音を入力するようになっています。

    キーボードの役目 はこの中央の絵のようになっています。 右手で子音 左手で母音を打つ方式です。また母音も小文字用と短音用と長音用と分かれています。 親指でシフトするようにになっており、キーボードは60個とれるようになっています。
    キーボードの配置はこのようになっています。
    実際には、手の形を考慮して、
    M式キーボード このような形をしています。

    このキーボードは日電のワープロに採用されました。 形の独特なことから、注目をひきました。 アルファベットの配列はqwertyとは全然違う配列になっているため、 英語の入力ではとまどうこともあったと考えられます。


    日本文入力方式と鍵盤方式の最適化と題する森田さんの論文です。
    M式キーボードのことが、論理的に詳しく書いてあります。
    1987年11月電子情報通信学会論文誌D に掲載されたものです。
    その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9 その10 その11

    M方式とかな漢字変換方式との優劣比較のところで、親指シフト方式との比較が論じられています。
    記憶負担量は親指シフト 480、 M方式 55 で 8分の1である。 総合文書入力速度は、漢字含有率40%のときには、M方式は親指シフト方式の約1倍半の速度となる。
    「M方式の方が親指シフト方式よりも熟練者の総合入力速度が速い」という結論は動かし得ないと思われる。 と結論づけてあります。


    ここで、この論文に対してコメントを書いておきます。
    この論文は、1987年 オアシスが発売されてから7年後に書かれたものです。そのころはすでに世の中に親指シフトのことが よく知られており、広く使われていました。
    入力方式では、1.記憶負担度 2.熟練者の入力速度 3.修正作業のすくないことおよび肉体的・精神的な負担が小さいこと が優劣を決定する重要な尺度であるとしています。

    まず、記憶負担度について
    親指シフトでは、 かな文字 56 だから、320 また、英語の120を加えると 480であるとしている。 M式では、それぞれが母音・子音に分割されているからという理由で、55であるとしている。 480と55とを比べて、8分の1以下であり、その差は極めて顕著としている。
    M式は子音と母音をいれるローマ字入力式なので、覚えるキーの数は少ないのはその通りであり 親指シフトは覚えるのは大変だが、いったん覚えたら使い易いというキーボードなので、これは当然でしょう。

    次に熟練者の入力速度です。 親指シフトはかな1文字を入力するのに、1打鍵で済むが、等価キーが56と多いので、打鍵時間が多い。 親指シフトの発生率30%と親指シフトの打鍵時間増加率30%を追加しなければならない。 また、左右交互打鍵率がM式90%にくらべて、53%なので、左右交互打鍵による入力速度の改善率が低い。 M式ではかな1文字を入力するのに、子音打鍵時間と母音打鍵時間、および子音・母音分解時間の3者を合計しなければ ならない。 云々で かな1文字を入力するための平均打鍵時間はM方式の方が親指シフト方式よりも若干少ない。 更に漢字の入力を考えるとM方式の優位性は顕著になる。 云々で 漢字含有率が40%のときには、M方式は親指シフト方式の約1倍半の速度となる。 (計算式やパラメタの値など数字の細部について今後若干の修正を必要とする場合もなろうが、 「M方式の方が親指シフト方式よりも、熟練者の総合入力速度が速い」という結論は動かし得ないと思われる。・・とあります。

    どうもここら辺りの議論は、あまり常識的ではありません。 親指シフトで等価キーが多いからというのは、熟練者には当てはまらない話ですし、親指シフトの打鍵増加率30%と いうのもおかしな話です。我々の経験では増加率はゼロです。ここで増加率を加えるのなら、M式だって 親指でシフトするキーボードだが、これには触れていません。
    子音と母音を打つ方法の方が、かなを直接打つよりも速いという結論はあまり直感的ではありません。

    また、入力時にひらかなか漢字かを識別して入力しているので、 変換キーの入力が不要になってその分速いということも強調してあります。
    しかし、漢字かかなかを考えて入力するのには、やはりそれを考慮する時間のようなものが必要でそれは余分に時間が かかることにつながると考えられます。 また、変換キーのないワープロは実際にシステムとしてテストしないとその実力を評価するのも難しいでしょう。

    次に修正などの作業による負担のことですが、M方式は漢字とかなを区別して入力しているので、入力後に修正を要する場合が少ない。 記憶負担量が少ない、左右打鍵率が高いので、疲れないなどの理由で優れているとしている。
    しかし、この議論は根拠不十分でそうかもしれないしそうでもないかも知れないという感じです。また、 単語登録の機能などワープロとしての機能とも関係があり、キーボードだけの比較は難しいと感じます。

    漢字であるという情報を入力するという発想は、カナ漢字変換のためには有力です。東芝の最初のワープロでもこのモードがありました。 しかし、私は最初から、「言葉の本質から考えると、言葉はカナでも漢字でもないもので、結果としてカナ漢字まじり文になっている」 と考えていました。したがって、カナで入力して結果として漢字カナまじり文をえるという考え方が正しいのではないかと思っていました。
    現在の日本語入力方法は結果としては、カナで入力してそのあと変換するという方法になってしまっています。 また、原稿をみて入力するのならまだしも、考えを直接キーボードから入力するのなら、 漢字かカナかを考えてその情報を入力するほうがかえって煩雑ではないかと考えています。